どうも、アフロマンスです。
今日は、国内トップクラスの人気DJ、DJ KOMORIさん、TJOさんと一緒に、DJの「選曲」をテーマに対談してみました。
よく知らない人からすると、「DJって、他人の曲をかけているだけでしょ?」って思われがちだけど、逆に言えば、他人の曲をかけているだけなのに、なぜそこまで差がつくのか?
人気DJの選曲に隠された哲学を、今の現場感と合わせて探ってみました。
PROFILE
DJ KOMORI
96年、一念発起でDJ活動をスタート。今や日本を代表するDJ/プロデューサーの地位を確立したDJ KOMORI。DJスタイルは常に進化を怠らず、時代をエスコートする研ぎ澄まされた感性は、当然一つのサウンドには留まらない。今年の春、国内では初となる本格的なオンラインDJスクールMIXFUN!を開設。 |
TJO
ジャンルを縦横無尽にプレイするミスター・オープンフォーマットDJ。東京を中心に日本各地でのクラブ・レジデントパーティーを抱える他、近年では世界中の多様な大型フェスに出演。また、ラジオ・パーソナリティーとしての人気も高い。 |
選曲の基本は「自分の好きな音楽」と「お客さんの好きな音楽」の交わる部分を探ること。
DJ KOMORI(以下 K):まず、そもそも「DJの仕事って何なのか?」という話なんだけど、例えるならソムリエやスタイリストに近いかなと思ってて。ワインや服などをつくるのではなく、セレクトすることが仕事。DJの根源も、盛り上げるのが仕事じゃなくて「シチュエーションに合わせて曲を考えて選ぶこと」が仕事なんだよね。
TJO(以下 T):若い子から「DJにとって一番大切なものは何ですか?」って質問されて、そういう時に「スキル」なのか「選曲」なのかって話によくなるんだけど、僕もDJに一番大事なのは「選曲」だと思ってる。スキルも大事だけど、選曲あってのスキルかなと。
K:若い子が「何をかけていいかわからない」って悩んでたりするけど、それこそがDJの仕事なんだから、ネガティブに思う必要はない。お客さんに合わせたり、自分の好きな曲をかけたり、そのバランスをとる。DJって、そういうもの。
アフロマンス(以下 ア):まさに、そのバランスが難しかったりしませんか?フロアで求められている曲と、自分がかけたい曲が違ったりするし・・・そのバランスってどう考えてます?
K:ちょうどさっき、考えて書いてみたんだけど・・・
ア:おお、すごい!図が出てきた!
K:僕の場合なんだけど、自分の好きな音楽でも、その場に合わなかったり、お客さんが好きじゃないと思われる曲は選択肢に入らない。同じように、お客さんが好きだけど、自分が好きじゃない音楽も入らない。図の①に当たる「自分の好きな音楽」と「お客さんの好きな音楽」が交わる部分の曲で、どう構成するのかというのが選曲の基本的な考え方。
あとは、レギュラーパーティーだったら新譜を多めにかけるとか(図②)、年齢層が高い場合はクラシックを多めにするとか(図③)、そういうバランスで考えてる。
T:こうして図にするとわかりやすいですね。以前、KOMORIさんと話してて確かになと思ったのが「結局、結果で判断するべき」という話。例えば、お客さんがめちゃくちゃ盛り上がったけど、メジャーな曲ばかりかけたというパターンと、自分の好きなコアな曲ばかりかけてお客さん全然盛り上がらなかったパターン、どっちがいいのか。プレイ前やプレイ中は迷うことがあるかもしれないけど、プレイ後の結果を見れば、やはり前者の方がいいという人が多いんじゃないかなと。
K:そこで個人的に気になるのは「メジャーな曲をかけるのがかっこ悪い」という意識がよくわからない。メジャーな曲をお客さんが求めているなら、かけるべき。好きな曲をかけることは大前提だけど、お客さんとの共通項を探すことを諦めたら、そこでパーティー終了ですよ。
今は、新譜の数もすごい数がリリースされているし、皆が好きなメジャーな曲はやっぱりよくできてる。メジャーな曲で、自分の好きな曲が1曲も無いというのは、まだまだ聞いてる曲の数や掘り方が足りないだけじゃないかと思う。
T:あと、どうしてもメジャーな曲をかけたくないなら現場を変えた方がいい。自分の好きな音楽が支持される場所でプレイするのも一つの手だと思う。
ア:以前、ラッパーのマチーデフさんと話したとき、売れる人と売れない人の差は何なのか?という話になって、「売れるのは、”売れることをひたすら考えてる人”か、”まったく売れることを考えてない人”のどちらか。そこの意識が中途半端な人は売れない。」と言ってて、真理だなーと。DJも、フロアメイクのプロになるのか、ひたすら自分の好きを貫くのか、明確にした方がいいんでしょうね。
国内トップクラスに新譜を聞いてるから「皆知らないけど、皆好きだろう」って曲の精度が違う。
T:もちろんメジャーな曲をかけるのはまったく問題ないんだけど、一方で、ダンスミュージックがポピュラー化したせいかわからないけど「皆が知ってる曲じゃないとウケない」という固定概念を持ちやすくなってる。それを崩すのが難しくて「皆が知らないけど、皆も好きになりそう」って曲をかけられないDJが多い。
ア:クラブシーンはこの10年間でずいぶん雰囲気が変わりましたよね。そういう「未知のいい曲」をかけるのがDJだったのに。
T:EDMのヒットソングがひたすらかかってた時代も終わり、今は色んな音楽を提案できる時期に来てる。だけど、未だに前のノリを引きずってて、「とにかく皆が知ってる曲で盛り上げないといけない!」って思っちゃってるDJが多いかな。
ア:前段の図でいくと「皆が好きと思われる音楽」=「皆が知ってる音楽」とは限らないですよね。まだ知らないけど好きと思われる音楽というのも当然あって、そこを提案していくこともやっていった方がいい、ということですよね。
K:ジョンくんのDJを聞いてて思うのが、国内トップクラスに新譜を聞いてるから、「皆知らないけど、皆好きだろう」って曲の精度が違うんだよね。例えば新譜を5曲かけようと思ったとしても、その背景に、何百曲も聞いて選び抜いたベスト5なのか、数十曲聞いて選んだベスト5なのかは違うなって。
ア:ちなみに、ジョンさんは月何曲くらい新譜を仕入れてるんですか?
T:月に2000曲くらいですかね。もらいものも含めると。
ア:えーーーー!そんなに!!
K:僕でも月500曲くらいかな。ジョンくん、やっぱりすごい聞いてるね〜。
ア:もはや、個人の中にビックデータが溜まってる感じですね(汗)
SNSを通して、現場のネクストヒットをつくっていく。
K:BB DiamondのFeelingとか、YOUTUBEで数百再生くらいだった曲が、ジョンくん発信でブレイクしたりするのは、さっき言ったように日頃どれだけ曲を掘っているかって話に加えて、発信力の差もあるよね。
ア:最近、ジョンさんはインスタのストーリーでよく新譜を紹介してるじゃないですか。実際にクラブの現場になったときに、ジョンさんのストーリーが予習になってて、クラブで聞くのが初めてでもSNSを通して「知ってる曲」になってて盛り上がるって話を聞いて、面白いなーと思いました。
T:インスタのストーリーに加えて、block.fmのラジオも同じような役割があって。現場だけだと、前聞いた時はEDMのDJをやってて、違う現場に行ったらディスコをかけてる、それだとお客さんは「え?」ってなっちゃうけど、SNSやラジオを通して、「EDMも好きだけど、こういうディスコも好きなんだよ」って発信していくと、点と点がうまくつながってTJO像が見える。
ア:なるほど。素晴らしいですね。
K:DJって、現場で曲をかけるだけ、でもないと思うんだよね。音楽について語ったり、SNSで発信したりすることも含めてDJ。たまに、DJなのにインスタはファッションや自撮りしかアップしてない人とかもいるけど、DJなら自分の好きな音楽について日頃から発信した方がいい。だって、ワインのことを一切語らないで、自撮りばっかりアップしてるソムリエのワインなんて飲みたくないでしょ?(笑)
ア:SNSの発信ってブランディングにもつながってると思うんですが、ゲストで呼ばれたり、売れてるDJの人って、特定のイメージがありますよね。このジャンルだったらこの人!とか、この現場だったらあの人だな!とか。
K:ブランディングって何も見た目がかっこいいとかそういう話じゃなくて、自分の芯を持つことだと思うんだよね。DJに関わらず、ブランドでよく言うのは「何を捨てるか。何をやらないか。」を決めること。
あと、知り合いのカメラマンが言ってて、なるほどなーと思ったのは、自分の好きを言語化すること。好きなものをどれだけ言語化して説明できるかってのは大事で、僕もジョンくんも、好きな曲について、何故この曲が好きなのかというをひたすら語れる。漠然とした「好き」をどこまで深められのかも大事だと思う。
フロアや選曲の「解像度」と、お客さんが身を任せられる「信頼感」
ア:時代的な話でいくと、昔はレコードで「曲の品切れ」があった訳じゃないですか。今はデータだから品切れもなければ、Shazamをすれば曲名も知れて、その場でDLできちゃう。その結果、持っている曲に差がなくなってきてると思うんですけど、そこでのDJの差ってどういった所だと思います?
K:前、アフロマンスが言ってた「解像度」って表現が一番しっくりくるかなと思ってて、例えばフロアを見る時に、単に盛り上がってる・盛り上がってないとか、ハウスがウケる・ウケないというレベルじゃなくて、フロアの年齢層の割合とか、この曲のこの部分が反応したから次はこの曲だ、くらいの目で見れるかってのが大きい。
T:あと、共感って信頼感からくると思うんですけど、DJセットが始まって、だんだん、この人の選曲いいな〜・・・この人のかける曲ならノッちゃおう〜ってところまで如何に持っていくか。
やっぱりつかみは大事で、冒頭で知ってる曲もたくさん使って、あ〜この人のDJで最後まで踊りたい!って思わせたら、そのあとは、新譜や攻めた選曲をしてもちゃんとついてくる。
ア:わかります。いいDJって、まずは安心感がありますよね。このDJになら身を任せられる感じ。DJの精神状態って、結構フロアに伝わるから、ちょっとミスったときに焦ったりすると、すぐにフロアに不安感が伝播してしまう。だから、ハートの強さも大事ですよね(笑)
あと、僕が思うのは、例えばヒットソングを連発でかけたとしても、上手いDJがプレイすると心地良いというか、グルーヴに持っていかれると思うんですけど、その点ってどう考えてます?
K:グルーヴという話だと、やっぱり音楽の理解度や、音楽の要素をどれだけわかってるかってことになるかな。例えるなら、その曲にどれだけハッシュタグをつけられるか。そして、他の曲と、どれだけ共通のハッシュタグを見つけられるか。
T:単純にジャンルということではなく、ギターの音色だとか、女性ボーカルの次に男性ボーカルをすぐ持ってくると気持ち悪いから、ファルセットを入れて、ニュアンスを近づけてグラデーションをつくっていくとか・・・
そのためには音楽の知識が必要だし、たくさんの楽曲を聞いて、たくさんの現場で、色んな人のプレイを聞くのがいいと思う。
ア:ちなみに、セットリストってどれくらい組んでます?例えば1時間のDJなら。
T:今までやってきた鉄板のセットがありつつ、新譜含めてかけたい曲を30曲くらい用意して、プレイしながらどっちにしようか考える感じですね。
K:僕の場合は、この辺かけたいなという曲を50曲くらい用意しておいて、順番は全然決めてない。ただ、当日「違うな」って思ったら、50曲全部かけないってこともあって、その勇気も大事だなと思う。
質問コーナー
ア:最後に、SNSで募集した質問に1問1答で答えていきましょうか。
※たくさんの質問を頂いたので、多かった質問に絞っています。今回答えられなかった分は、また、それぞれSNSで回答するかもです。
Q. 今まででいちばんスベったなー、と思う選曲があれば教えてください!またその失敗をどのようにリカバーしたのかを教えてくださいm(__)m
K:以前、若手のオーガナイザーが主催するフェスに出たときに、R&Bセットでお願いしますって言われて、実際やったら全然ウケなくてスベったことがあったなぁ(笑)
T:ありますね(笑)ハウスセットでお願いされたのに、全然客層があってなかったとか。でも、結局は、DJ側がバックアッププランを持っておかないといけないに尽きるかな。
Q. フォルダやプレイリストの仕分け方を参考に教えてください!
K:これは話すと、めっちゃ長くなっちゃうやつなんだけど・・・(笑)ジャンルごと、BPMごと、イベントごとなど、色んな切り方で分けてるかな。
T:僕は、イベントごとに分けてて、似ている過去のイベントのプレイリストをすぐに参照できるように近くに置いておく、という感じです。
Q. どこで曲を掘っているのか教えてください。
T:クラブやフェスの現場、Spotify、海外ラジオなど。
K:Spotify、DJ POOL、あとYOUTUBEのおすすめも結構見ます。
また、僕が運営しているmixfunで、プロのDJがmp3をダウンロードしている海外のおすすめ無料or有料音楽サービスも紹介しています。
https://mixfun.jp/pub/ongen
Q. 選曲やプレイの際に、キーやBPMは気にしていますか?
T:もちろん気にしてます。けど、キーが合ってなくても、現場で合わせるとハマる組み合わせとかもあるから、縛られすぎないようにしてます。
K:僕はスタンスとして、絶対にキーは合わせるタイプですね。
Q. DJの時は大体、何曲先まで曲を決めてますか?
K:次の曲までしか決めてない。かけた曲の反応で都度選曲は考えてます。
T:僕の場合は、3曲くらいのブロックがあって、3曲をかけて、そこから次はどのブロックに行くかといった感じで考えてます。
最後に
人気DJの選曲への考え方は、いかがだったでしょうか?
ポイントをまとめると・・・
✔︎ 選曲の基本は「自分の好きな音楽」と「お客さんが好きな音楽」の交わる部分を探ること。
✔︎ 「皆が好きと思われる音楽」=「皆が知ってる音楽」とは限らない。新しい音楽も提案していくべき。
✔︎ 現場だけで考えるのではなく、SNSやメディアを通じて、自分の好きを発信してネクストヒットをつくり、ブランドを確立していく。
✔︎ 大前提として、たくさんの音楽を聞く、たくさんの現場でいろんなDJスタイルを見る、そして音楽に対する知識を深めることが重要。
ということだったかと思います。
全体を通して思ったのは、選曲に対して、とにかく考えているし、トライ&エラーをひたすら重ねて続けているということ。
最適な手法は、時代やシーンの変化に合わせて、変わっていきます。
ただ、どんなに変化しても、「こんなもの」と曖昧にせず、真摯に向き合って最適な答えを探していくことが最も重要だなと思いました。
若手のDJはもちろん、悩んでいるDJや、選曲に興味がある人に参考になれば幸いです。
PS
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選曲の哲学を知った上で改めて見るDJプレイはより一層楽しい!
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12/16(日) ちょっと大人なクリスマスサーキット「エビクリ2018」
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世の中に、もっとワクワクを。