どうも、アフロマンスです。
今日は、最近起業した2人の人気DJ、DJ KOMORIとBABY-Tを招いて、「起業した内容」や「起業する理由」について対談してみました。
クラブシーンの中では、充分「成功者」と言えるプロフェッショナルなDJの2人。そこから何故、起業という選択につながっていったのか興味があったので聞いてみました。
プロフィール
|
|
DJ KOMORI
96年、一念発起でDJ活動をスタート。今や日本を代表するDJ/プロデューサーの地位を確立したDJ KOMORI。DJスタイルは常に進化を怠らず、時代をエスコートする研ぎ澄まされた感性は、当然一つのサウンドには留まらない。 |
BABY-T
日本のダンスミュージックシーンの中でも限りなく稀なボーダーレスDJ/Producer。10代の頃から圧倒的な現場数をこなし、EU圏のCLUBシーンで圧倒的な支持を受けるEclectic Styleを武器にあらゆるシーンのイベントからオファーが殺到。 |
DJはプロになるだけが選択肢じゃない(DJ KOMORI)
アフロマンス(以下、ア):早速なんですが、それぞれの取り組んでいる事業について教えてもらえますか?じゃあ、KOMORIさんから。
DJ KOMORI(以下、K):3月の終わりにオンラインのDJスクール「MIXFUN!」を立ち上げました。これまでオープンに開かれたDJのオンラインスクールってあまりなくて。また、リアルのDJスクールはあるんだけど、料金もそれなりに高いって声を周りから聞いたりしていました。
既存のDJスクールに講師として誘われることもあったんだけど、今の時代を考えると、本当にマンツーマンがいいのか?もっと違うやり方はないのか?と思い始め、去年の年末にふと思い立って、そこから3ヶ月くらいで、一から勉強して、サービスをオープン。その過程で起業した、という感じです。起業はこのビジネスのためにしたので、アーティストとしてのマネジメントは今後もSUGARBITZに変わらずサポートしてもらっています。
DJ KOMORIさんが開講したオンラインDJスクール「MIXFUN!」
ア:思い立ってから3ヶ月!めっちゃ期間短いですね!?
K:今まで、音楽制作の現場だと、時間をかけて、完璧なものに仕上げてからリリースする、というのが基本だったんだけど、WEBサービスを勉強していくと必ずしもそのやり方がいいとは限らないなと思い始めて。リーンスタートアップって言ったりするんだけど、早いうちに小さい試作品を出して、出しながらブラッシュアップしていくってやり方でやってみようかなと。
間口は広く、入っていくと深い。そんなサービスにしたかったから、例えば機材のセレクトも発信側で決め込みたくなくて。
「どういう機材やソフトを使うのか?」
「どういうDJになりたいのか?」
ユーザーの声を聞きながら、コンテンツをブラッシュアップしていこうと思っています。
「MIXFUN!」の動画のイメージ
ア:なるほど。本当にスタートアップ的な発想ですね。ちなみに、オンラインDJスクールのやり方っていくつかあると思うんですけど、KOMORIさんがつくっているレシピ動画みたいな真上から撮ったDJスクール動画って、面白いですよね。普通だったら、DJブースの正面から撮って「こんにちは!DJ KOMORIです!」って自己紹介から入りそうなのに、全然KOMORIさんの顔も出てこないし。
K:DTM(音楽制作)を海外のオンラインサービスで学んだりしていて思ったんだけど、本気で学びたいと思っている人はジョークや余計なものは要らないんだよね。できるだけ完結に、難しいことをわかりやすく学びたい。そんなニーズに答えられるような、濃いコンテンツをつくりたい。
あと、閉じた会員向けだけにやっていても、DJカルチャー自体が広がっていかないなと思っている。
DJはプロになるだけが選択肢じゃない。趣味でやっても楽しい。それくらい気軽にDJに触れる人が、一人でも増えるといいなと思ってやっています。
BABY-T(以下、B):だから、動画でも簡易的なDJアプリを使ってたりするんですね。
K:そう。DJをスマホアプリでもプレイしてくれる人が増えれば、DJ自体への理解が増えて、必ず頑張ってるプロにも還元されるはずと思っています。
ア:僕も「DJの間口を広げた方がいい」ということはよく考えてて。現状のDJを取り巻く環境を「シンガー」に例えると、歌いたいと思ったら、それなりのお金を払ってボイトレに通うか(=DJスクール)、いきなり知らない人の前でステージ上で歌う(=クラブ)、の二択みたいな状況じゃないですか?もっと「カラオケBOX」くらい、DJをライトに楽しめる場があってもいいのになと思ってます。
K:今まではステップを踏まないとDJができなかった。機材も高かったし。でも、ここ数年、機材のクオリティは上がって、値段は下がっているし、DJのアプリだってバカにできない。DJは、これをチャンスと取らないといけないと思っています。
B:間違いないですね。
人間として、漢としての幅を広げる(BABY-T)
ア:BABY-Tの方は、まだティザーみたいな感じだよね?
B:ORIENTIS(オリエンティス)っていうチームでやるよって発表した段階ですね。基本的には音楽制作と、動画のクリエイティブを事業の柱にしていこうと思っています。
ORIENTIS(オリエンティス)の発表ツイート
B:で、なんでこのタイミングかって言うと・・・DJ始めたのが18歳の時で、20代はいろんなところでプレイさせてもらって、「DJはとにかくプレイヤーがカッコいい、他のことに手を出しているヤツはダサい」ってずっと思ってて。
若い時って同世代とばかり付き合うから、その価値観も当たり前だったんですけど、次第に上の世代の色んな人と交流するようになってきて、その考え方が自分の可能性を狭めていると30歳になって急に気づいてきたんです。
選択肢はプレイヤーだけとは限らない。
人間として、漢としての幅を広げたい。
これから30代はまた別の顔を持って頑張ってみよう。そう思いました。
ア:なるほど。
B:あと、10代からずっと思ってきたんですが、DJって職業をなんでこんなバカにするのか?と。誰に話しても、酒とか女とか・・・なんで、そんな感じなんだろう、と。海外ではスーパースターもいるのに。
ア:日本だと、クラブって大学生になって行き始めて、数年楽しんで、20代後半とか、ちょっと落ち着いてきたら卒業って言って、行かなくなる。「え?まだクラブ行ってるの?」みたいな。でも、海外だったら、そういう感覚もないし、年齢に関係なく、幅広い層がクラブを楽しんでるからね。
B:その通りだと思います。僕も海外の現場とかも行きますけど、年齢層も幅広いし・・・なのに、日本ではなんでDJっていう職業はバカにされるのか。
そんな中で、先ほど話に出ていたように、DJ自体の可能性や裾野を広げると、これから変わってくるのかなって。これから数年、可能性が広がっていくスタートの時代なんじゃないかなと。その時に、DJプレイヤーだけでいくのがいいのか?乗り遅れちゃうんじゃないのか?と。
なんていうか、そもそもDJを通して、DJの価値観をあげたかったのに、「プレイヤー以外はダサい」っていう自分の考え方で、DJの可能性を狭めている気がして。18歳に思っていたことに、30歳になって、ようやく向き合えるようになってきた感じです。ちゃんと、実をつけよう、と。
音だけでできることがもっとあると思う。ちゃんと本質的なことをやる人を増やしたい。(DJ KOMORI)
ア:裾野を広げるという意味でいくと、一般企業の注目も高まっていると思います。若い世代に向けてマーケティングするときに「DJ」や「ダンスミュージック」という切り口がここ数年増えている。だけど、ただ「DJ」というだけで、一般企業が呼んでも、イベントや客層とマッチしなかったり、いい成果が生まれない、という場面も多々ありますね。なんか「流行ってると聞いたらか呼んでみたけどイマイチだね」みたいな。それは勿体ないなと思ってます。
K:DJというものがちゃんと理解されてないからだよね。
ア:まだシーンとして、マニアックなんでしょうね。
K:例えば、企業のレセプションの選曲って、本当に難しい。テンポ、音圧、音楽の知識も必要だし、選曲の幅の広さも必要。お客さんのちょっとしたリズムの取り方を見て、臨機応変に対応する。根本的なリテラシーが、DJ側も追いついていないのかもしれない。
B:最近思うのが、これまでクラブシーンって裾野が狭かった分、音が好きな人が多かった。対して、今は裾野が広がった分、音楽で心をつかむのがとても難しい。フェスが流行って、決まったセットをやるDJも増えたけど、現場では一概にそれが正解とは言い切れない。そんな中、パワープレイというか、心をつかめるDJが強いんじゃないかなと思っていて。TJOさんとかKICK OFFさん、アフロさんはそんなイメージ。そして、そういうDJをお客さんが求めている時代なんじゃないかと。いい音楽をかけるのは当然として、エンタメ性も求められている気がします。
K:それは、人にもよるし、適材適所なんじゃない?
B:どうやってエンタメ性を出していけばいいのか?結構、悩んでいるんですよ。僕のDJプレイは、DJやっている人から見ると、テクニックだったり流れだったりで一定の評価はされると思うんですが、一般の人にはどこまで伝わるものかなと思ったり・・・お2人はそういう悩みはありますか?(笑)
K:んー、例えばマイクを使っているDJを否定する気はまったくないけど、「今からプレイするから皆集まってー」って言ったらDJは終わりかなと思ってる。何かやるときも、自分の中でやっていいラインと、やっちゃいけないラインがあって、そのできる中で全力は尽くすけど、それでダメなときは、しかたないかなと思う。
ア:僕は商業施設やフェス会場など、いわゆる「クラブじゃない場所」でプレイすることが多いから、そこは割り切ってる気がする。
DJの域を超えて考えないといけないというか、アーティストのライブと横並びで考えたときに、心をつかむ為に、もっとできることはないのか?そう思うと、見た目だって、パフォーマンスだって、やれることはいくらでもあると思う。
K:うーん、俺は、DJがキャラをつくる必要はないと思うんだよね。今の日本のDJを見ていても、そこが足りてないからダメってことはないと思う。
B:エンタメ性をとるか?カルチャー性をとるかって話ですかね?
K:というか、僕もふくみ、DJに対する理解が浅いんじゃないかな。音だけでできることがもっとあると思う。だから、スクールをやっている。なんというか、ちゃんと本質的なことをやる人を増やしたい。
もちろん、入り口としては色んなパーティーがあった方がいいと思うんだけど、DJに関してはそう思うかな・・・。ちゃんとやってれば、結果出るんじゃないかと思う。
B:多様性が考えられるようになっただけ、シーンが広がってるってことじゃないですかね。
「俺だけ上がればいい」ってのは、人間としてかっこ悪い。(BABY-T)
ア:DJ論になっちゃったので、少し戻しましょうか(笑)BABY-Tの話に戻るんだけど、どんなことをやっていくんだっけ?
B:レーベルをやっていこうと思っています。最初からUSやヨーロッパを狙っていくのではなく、近い国とユナイトしていきたい。具体的にはアジアのアーティストとコラボして、楽曲を制作したり、イベントもやっていきたいと思っています。
今、日本のシーンは正直、USやヨーロッパに立ち向かえる土壌が整っていない。外タレは来日するけど、興行して終わり。そうじゃなくて、せっかく来たなら、何か一緒にやれる土壌をつくりたい。
アーティスト個人が点としてはあるけど、それでは弱い。それらをつないで、アジアの線にして、海外に進出していきたいと思っています。
ア:なるほど。個人ではなく、チームでってことだよね。
B:そうです。20代前半の時は「俺だけ上がればいい」って正直思っていたところもありますけど、それって限界もあるし、結局、人間としてはかっこ悪い。俺は、かっこいい人間になりたい。
K:それ言えちゃうところがいいよね(笑)そういうところが人を惹きつけるんだろうね。
あと、今のSNSやプラットフォームの中で、ビジネスをやるのも限界があるなと思っていて。曲を売るのも、SNSにアップするのも、結局誰が得しているのかって、そのプラットフォーマーなんだよね。
本質的に主導権がない場所で、仕事をしていくのは怖い。
それで、「MIXFUN!」も自分でメディアをつくっている。これからはそういうのが強いんじゃないかって。コンテンツの権利も自分のものだし。
ア:今、成功し始めているサービスはそういう傾向にありますよね。SNS上でバズるコンテンツをつくっても消費されるだけで、結局、自分の所には還ってこない。自分のプラットフォームやメディアをつくって、自分のコンテンツを発信して、権利も含めてアーカイブが資産となっていく方が強いですよね。
K:例えば、インスタで写真の加工をしてる時、なんの価値も産んでないなって思って嫌になったりする(笑)自分をよく見せるんじゃなくて、価値があることがしたい。いい服着て、いいもの食べて、よりも、DJの楽しさを伝えることに時間を使いたいなと思っている。
アフロマンスが言ってた「幸せの総量が増える」ような仕事をしないといけないと思っている。インスタのいいねが増えても、世の中の幸せは増えないし。
最後に一言
ア:そろそろいい時間になってきたので、それぞれ締めの言葉にいきましょうか。そうですね。若いDJやオーガナイザーへメッセージをもらえますか?
K:ちゃんと一人一人のやりたいことを、実際にやろうとする流れになっていけばいいなと思っています。
DJをするのも、イベントをつくるのも、皆が思っているより自由だし、コストをかけずにスタートできる。僕とBABY-Tは、起業だったけど、それはあくまでプロセスで、自分の信じたものを新しく作り出したいと思っていて、それは誰にも、とがめられることじゃない。
なんか、自分はそれができないんじゃないかと思っている若い子が多い。
大きいフェスに出れないと、有名なDJになれないのか?
そもそも、有名なDJにならないとダメなのか?
そもそも、DJだけで食っていかないと幸せじゃないのか?
ア:超わかります。成功しないと、やる意味ない、みたいな空気感。でも、そもそも好きなことなら、やればいい。
K:皆、純粋な気持ちでDJを始めているんだけど、どこか見えなくなっている。自分のやりたいことを素に戻って考えれば、やることが見えていくるんじゃないかなと思う。そして、若い子が、俺らのことを見て、同じことをやろうとするんじゃなくて、自分たちの切り口を考えてほしい。そんなきっかけになればいいなと思っています。
B:僕も近くて、自分の信じた道をひたすら進んで欲しい。一歩踏み出すのはなかなか難しいと感じるんだけど、一歩踏み出しちゃえばそんな難しいことはない。
僕も「よし、起業しよう!」と決めて、でも、今まで音楽しかやってなくて、わからないことだらけだったけど、まずは動いて、後から知識をつけた。
若い子と話すと、やった後のことをやたら心配しているけど、そんなことは考えずに、とにかく踏み出せばいい。
一番最初にDJをやり始めたときの気持ちは、そんなこと考えていなかったはず。その気持ちを忘れなければ、なんでもできると思います。
ア:そうだね。そして、実際、チャレンジする人には色んな人が手助けしてくれるしね。挑戦することによって、応援も生まれるし、人は巻き込まれる。個人じゃできなかったことができる。起業でも、チームでも、プロジェクトでも、一緒だね。
B:まさに。僕は人に頼らないで、可能性狭めてきたタイプなんで。「一人でできるのがカッコイイぜ」って。それが一番カッコ悪いってことを最後に強く伝えたいと思います(笑)
一同:(笑)
ア:これからの2人の活躍に期待しつつ、これを読んだ人が、自分のやりたいことへ一歩を踏み出す後押しになるといいなと思います。
ありがとうございました。
LINK
DJ KOMORIさんが開講したオンラインDJスクール「MIXFUN!」
BABY-Tが立ち上げた音楽&映像クリエイティブ会社「ORIENTIS」